せんきょ

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 とりあえず悔しいったらありゃしない。何でかと言えば今回の衆院選の投票に行けなかったことが、だ。「お前一人が行かなくたってどうなるわけでもないだろう」と言う向きもあるかも知れないが、その「お前一人」が今回のやっぱり低い投票率に結びついていて、しかも、現政権の温存に力を貸してしまったかと思うと悔しくて悔しくて仕方がないのだ。
 「20歳になったら誰でも投票する権利が貰える」これは憲法できちんと制定されている国民の権利だ。しかし若くして投票所に行かない人共よ、キミタチはその選挙権をドブに捨てていると思わないかい?WOGは今回行かなくて「ああ、なんて酷いことをしてしまったんだ。まさにドブ落ちだ、ドブ落ち」と思ったぞ。日本に住んでて、惰性のように生きている人達には判らないかも知れないが、外国に住んでみればその権利というのは非常に重いものであることに否が応でも気付かされるんだよ。
 WOGはアメリカではビザを持ってはいるものの、完全に「外国人」扱いである。つまり、政治参加はできないし、就労にだっていちゃもんが付けられる。日本の若い子タチは「プータローでもバイトはあるからちゃんと生活ぐらいはできるし」と言うが、ここアメリカではビザの種類によって細かく就労制限が課されていて、少しでもこれに違反すると、恐怖のイミグレ(アメリカ移民局)の処罰が待っているのだ。しかも、処罰の対象は本人(見つかったら強制退去の世界)だけでなく、その人を働かせていた職場や働くことを認めた責任者(団体)にまで及ぶ。「なんの気兼ね無しにすぐ働けること」の有り難みがこれほど判ることはないだろう。
 シャーロットに住む前も、WOGは日本にいるときは出来る限り投票しようとつとめてきた。まあその動機というのは「使わなければ勿体ないから」という貧乏根性も入っているのだが、それ以上に、投票に行くと選挙というものに対して、また選挙の結果に対して非常に興味を持って見聞できるのが面白いという理由がある。自分の支持を決めるのは勿論、他の候補者についてもちょこちょこ調べてみてそれがどう選挙結果に結びつくかというのはなかなか興味深い。
 投票には行けなかったが、今回の結果は小選挙区の特徴が思いっきり出た結果になったような気がしてならない。日本は前回の選挙から「小選挙区比例代表並立制」というややこしさ極まりない選挙制度が成立していて、前回の時はWOGも投票所に行っていつもなら1枚だった紙を2枚も渡され「また訳分かんないことにしおって」と思ったものだ。因みにアサヒ・コムの選挙コーナーではこの「小選挙区比例代表並立制」の成立の経緯について「妥協の産物」という言葉を2度も使って説明していて何とも「えせ左翼」の朝日らしいなと片えくぼを浮かべてしまった。何もそんな一刀両断にせんでも、もうちょっとこうましな言い方あるんと違うんかい。
 で、結果から言って、どう考えても今回の選挙はこの制度のお陰で自民党があれだけの勢力減に留まった、としか考えられないのだ。勿論、今回の選挙で自民党は単独過半数を失い、公明党との連立提携も危ういところが垣間見られたが、それでも大勢としては連立政権による過半数は維持している。多分これが昔の中選挙区制だったら過半数を失うどころか、自民党は200議席程に減少していたのではないだろうか。
 そう思うのも、小選挙区制というのは、1選挙区につき1人しか選ぶことが出来ない。つまり、その選挙区で昔から勢力を持っている政治家が当選しやすい仕組みになっているのだ。これは保守的な雰囲気が根強い地方に行けば行くほど顕著で、WOGの故郷である岐阜など5区全部が自民党当選だった。これが昔の2区だけだった中選挙区制の時代であれば一人ぐらいは自民党以外からも当選者が出ていたのだが、小選挙区ではそれが「やっぱり自民党」という田舎の雰囲気に流されてしまったのだろう。
 田舎の自民党支持というのはWOGの方からはっきり言わせて貰えば「おかげ支持」なのだ。例を挙げるならば「先生が橋を造ってくれたから」というのがある。建設族の自民党議員だとそういうことはたやすいことである。実際ウチの近くにある揖斐川にかかっている橋はウチの町名に因んだ名前がついているが、陰ではその橋を建造する予算を県民のためにふんだくってきた議員の名前を付けて「○○(←人名)橋」と呼ばれている。 また、もっとあからさまな理由になると「自分の知り合いの子供を大学に入学させてくれたから」というのだってある。「そんなのでっちあげなんじゃないか」と疑う事なかれ。ウチの祖父がこの理由で未だに毎回自民党に投票しているんだから。今はどうだかは知らないが昔は「議員の力添えで」大学に入学した人だってやたら多かった。某大学の某学部(流石に名誉のために伏せておこう)なんて共通一次が始まる前まではそういう「口利き」のコネで入学したボンボンどもばかりだったという話も聞く。
 ともかく、岐阜というのはそういう非常に保守的で閉鎖的なところで、WOGみたいなはねっかえりが生きてはいけない感じだったので飛び出して来た訳だ。まぁ、これ以上地元の悪口を言うと地元から奨学金を出して貰っている身なのでやめておこう。
 大体にして岐阜は前々回の衆院選の時に自民党が惨敗して細川連立内閣ができた時だって、並み居る現職・新人の自民候補が破れていく中、たった一人自民党からの新人候補として立候補した人を当選させた土地柄なのだ。どれぐらい自民党の基盤が強固か、推して知られるであろう。因みにその人とはこの前郵政大臣をやっていた野田聖子さん。小渕の娘が世襲立候補で当選したのどうのと騒いでいるが、野田さんだってれっきとした世襲議員で、親や祖父の代からの固い地盤があっての当選だった。小渕と言えば自民王国である群馬も小選挙区では全員自民党でしたな。
 他の選挙区にも目を向けてみるとなかなか面白い傾向があった。昔から共産王国と言われていた京都は府議会の共産勢力の凋落を示しているかの如く共産党ががた落ちで、かつての民社王国(若い人、「民社って何?社民の間違い??」と言わないように。昔はそういう政党があったんだよ)だった愛知ではいまや民主天国。基地問題で揺れる沖縄は分裂した結果で自民党当選者は1人しかいなかった。とはいえ、沖縄選挙区の3人のウチ自民一人と公明一人。後の一人は社民。これでは与党多数。沖縄県議会では自民でも公明でもない第三勢力の党がもっとも勢力がある(そしてこの党が主に基地に関する反対/問題提起運動を仕切っている)のだが、この結果が果たしてどう反映するのだろうか。
 「越山会」の故郷である新潟はそれほど自民に毒されてはいなかった(そのかわり隣の富山だの石川だの福井だの、その他日本海側の県は見るのも嫌なぐらい自民党しか当選していなかった。どーせ上に挙げたような理由なんだろうな)。しかしながら5区の田中眞紀子さんの当選には敵ながら(いつから敵になったんだ自分)天晴れと拍手を送りたい。この人だってはっきり言って世襲議員まんまのお方だが、この人の弁舌は聞いていて本当にスカッとする。才気煥発で父親譲りの口達者さは特にメディアの前では何かと「あーうー」な議員が多い自民党の中では異色だ。あのべらべらこうるさい久米宏をむこうにしてカウンター一発で黙らせることが出来るのはこの人だけだろう。
 こういった人気を背景に「田中さんが総理大臣になってくれたらいいのに」という意見が出てきている。現に選挙直前の「総理大臣になってほしい人」の中で田中さんは現職の森さんと並ぶ支持率(といってもめちゃめちゃ低かった)だった。まぁこれは単なる人気投票に近いという感も否めないが、それでも出てくる、ということだけでも彼女の影響力が伺えるだろう。確かに今のままの毒舌で総理大臣になってくれたらそれこそ日本も笑える国になると思うのだが、人の上にたつ存在になると人間は変わるもので、途端に保守的になる人が多い。田中さんだってそうならないとは限らない。だからWOGはこの意見に関してはどうしても疑問符を付けたくなる。
 おっと最後に惨敗した共産党のことを書かねば。ここしばらく共産党のことを日記で取り上げたが、今回の選挙では不破委員長の打ち出した「ソフト路線」が完全に裏目に出た形になってしまったようだ。WOGも「民主党との連立政権構想」を打ち出したときに「共産党も変わったな」とは思ったが、多分このことで有権者が「共産党も所詮は権力の汁を吸ってみたい俗物なんだ」と失望したのかも知れない。もし「連立」などと言わずに頑固に共産党の党綱領に則った政策方針を打ち出していたのならば、あるいはこの選挙の結果は違ってきたのかもしれない。まぁ、でもこの失った共産党の票はそのまま社民党が食ったといっても結果的には間違いではないような気もするのだが・・・。

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