「恥ずかしいもの」の違い

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 何だかんだと言って1ヶ月も更新をサボってしまった・・・(泣)毎回こんな駄文でも楽しみにして下さっている人に対しては非常に申し訳ない気持ちで一杯だ。授業が始まり、そして毎週末には研究と趣味を兼ねてチャペルヒルまで行っていると、全く日記を書く時間が無い。こちらのページはもう一つのページに比べてアクセス数が少ないから、ついついないがしろにしてしまうが、よく考えれば一般的に生活している人にとっては圧倒的にこのページの方が興味があるのではないか、と考えつくと、これ以上はサボれまい、と思って重い腰を上げて更新を決心した。

 今日は滅茶苦茶に寒い。日中でも摂氏0度辺りをうろちょろするという天気で、さっきから天気予報チャンネルでもひっきりなしにフリージングレインの警報を呼びかけている。つい2日前には華氏80度位に上がって、道行く人は半袖だったというのに、何なんだろう、この変わりようは(泣)。

 さて、今回はこっちで生活していて気付いたことを、今更ながら書いてみよう。最初に断っておくがあまりきれいな話ではないので食事中に読まないように。
 女性にとって毎月訪れる厄介な生理現象は、何処に行っても厄介なモノだが、その生理の時に用いるナプキンに対する感覚が日本とこっちでは違う。普通日本の場合コンビニやらスーパーやらでナプキンを購入した場合、店員さんは茶色の紙袋に包んでからビニールバックに入れてくれる(このことはスーパーに買い物に行かないけしからん一部のオヤジ共&その予備軍の男共には余り判らないことかも知れないが)。「ビニールバックにナプキンをそのまま入れれば透けて見えるから・・・」との配慮だ。コンビニではこの「生理用ナプキンは紙袋に入れる」という規則がレジ打ちの人に対してしかれているかのように、若い男の店員さんでも、ちゃんと紙袋に入れてくれる。
 しかしながら、こちらでは女の定員さんだろうが男の店員さんだろうが、ナプキンはバーコードをなぞった後はそのままビニールバック行き。買った人もナプキンがバックから透けて見えていても全く気にせずにばかでかいショッピングカートを押して自分の車に急ぐ。WOGの推測するところ、どうやらアメリカ人にとっては女性の生理用ナプキンというのは「恥ずかしくも何ともなくて、当たり前のもの」という感覚らしい。
 大体アメリカ人の女性というのは恥ずかしいという感覚が麻痺しているかのように、夏になればどんなに太っていてもキャミソールを着るし(時々まるでボンレスハムを見ているような錯覚に陥ることもある)、トイレでは惜しげもなく音を立てて放尿する。小用を足すときにですらカモフラージュの音を出して隠す機械が各トイレに設置されている日本のトイレを見て、彼らはどう思うだろうか。たぶん「そんなものにどうしてお金を使うのか」といぶかしむ人半分、「一体これは何だ」と理解不能な人半分、といったところだろう。
 生理用のナプキンそのものにしたって、WOGが初めてこちらで生活した4年前には薄型のものが発売されておらず、仕方がないので一番薄いと思われるものを購入した。が、これが笑えるぐらいに厚くてでかい。コレではおむつだ。よく日本ではナプキンのことを「座布団」、タンポンのことを「千歳飴」とか「栓」とかいう隠語を使って話をするのだが、これは座布団とかではなくて、まるっきり布団だ。しかもまあ、でかい割に横漏れがじゃんじゃんなのだ。アメリカ人の大雑把さ、無神経さをまざまざと体験させられてしまった気分になってしまった。その頃日本のナプキン市場では既に薄型のものが全盛だった。アメリカのばかでかい布団が漏れるのに、日本の薄いナプキンは漏らさないし、動きやすい。この辺の気遣いは日本を見習うべきだろう、とよく思ったものだった。(笑い話になるが、私の友人がアメリカに旅行した人からおみやげを貰ったのだが、それが布団ナプキンだった、と言うのを思い出した。確かに日本にはないから珍しい、と言えば珍しいけれど・・・) 幸いにして私が留学を始めた1年半前には反省したのかアメリカでも薄型ナプキンが売られていてほっとしたものだ。WOGは病気の関係でタンポンは使えないので、何か日本のものと変わったところがあるかどうかはよく判らない。

 さて、話をスーパーに戻そう。彼らはナプキンを紙袋には包まない。では、何か紙袋に包んで、更にそれからビニール袋に入れてくれるものはあるのか。
 あるのだ、これが。たぶんこの答えは日本で生きている日本人には信じられないかもしれない。
 酒がそれである。
 スーパーでは酒が売られている。未成年でも一応レジまでは持っていける。しかし、レジでは8割以上の確率でパスポートとか免許証などのID(身分証明書)を見せることを求められる。レジ打ち係にはスーパーの管理責任者が「見たところ30歳以下に見える客にはIDの提出を求めること」と命令が下っているのだ。もしIDを見せなかったらその客は酒を買うことができない。未成年の場合は尚更だ。
 そしてIDを見せてバーコードが認識された後はビールの6本入りセットだろうが、ワインだろうが、ウィスキーだろうが、コニャックだろうが、丁重に茶色の不透明の紙袋の中に包まれ、時にはその上からビニール袋をかぶされる。その上で他の商品と一緒にビニール袋の中に入れられるのだ。日本的な物言いをして良いのであれば、こっちでの酒、というのは日本のナプキンと同じ扱いをされているのだ。即ち、アメリカ人にとっては酒は「恥ずかしいもの、大っぴらに見せてはいけないもの」なのである。
 何で酒ごときにそんな大層な、と思うかもしれない。しかし、WOGに言わせれば大半の日本人はアメリカを誤解している。アメリカは日本人が考えているよりも非常に保守的な国だ。
 戦後アメリカから流入してきて、若者の間に定着したものは往々にして軽佻浮薄のレッテルを保守的な高年齢層からつけられ、アメリカのものは日本の「伝統文化」や長年培われてきた道徳にことごとく反するものだ、というイメージが付与されてきた。例えばロックンロール、例えばハリウッド映画、例えばマクドナルド。「アメリカ産」のものは日本では「ちょっと不良じみた軽薄文化」として位置づけられている。このことは「髪を染め、不良じみた格好をして改造車を乗り回す人々」を表す言葉として「ヤンキー」というのが存在していることからも明らかだろう。このような色眼鏡をつけているから、ついつい日本人は洋モノのポルノ雑誌やらXX(成人指定)のビデオを「すごいもの」と位置づけてしまう。WOGに言わせれば深夜番組でおねえちゃんのハダカが民放で流れ、本屋にはポルノ雑誌が小学生の目にも届くところに置かれ、沿道にはえせ洋館だのお城だのをかたどったラブホテルとかソープランドが大っぴらに林立している日本の方がよっぽど「すごい」と思う。
 酒に関しても、日本人は昔この国で禁酒法が施行されていた、ということを忘れている。(まあその時期にはアメリカでは実際には闇酒場がごまんとできて、法律があってないようなものだった、ということはさておき)そういった法案が実際に議会を通過してしまえる位に、アメリカ人は自らをpureであり、そうあるべきだと思っている。またアメリカ合衆国に住む人々にもそれを押しつけたがる。この辺を理解せずに、自分の身の回りにあるモノだけでアメリカを理解した気になるのは余りに早計と言わざるを得ない。
 WOGの住むノースカロライナは保守的な南部に属している。酒に関しても非常に保守的で、今でも郡ごとにアルコールの販売が禁止されている郡とされていない郡がある。禁止されていない郡でも日曜日の午前中(キリスト教徒が80%以上を占めるアメリカでは教会に参加し、礼拝をする時間帯)にはスーパーで酒を買おうとしても買えないこともある。
 アメリカでの酒に関する感情のケースをそのまま日本のナプキンのケースに当てはめることは出来ないが、何を見せてはいけないか、何を公の場で語ってはいけないか、という一般的なタブー感覚のこの違いはよく考えてみるとなかなかに面白い。
 ・・・ということは、女の生理だのナプキンだのをここまで堂々と語るWOGというのは日本の中では「掟破り」的存在なんだろうなぁ(苦笑)。

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